【ミルクシスルの血液浄化と解毒作用について】
「血液浄化」や「解毒」という用語は、漢方医学やアーユルベーダ医学などの伝統医療や自然療法でよく使用されます。体に取り込まれた毒物を解毒し、体内にたまった老廃物の排泄を促進して、血液をきれいにする作用を意味します。
抗がん剤による治療中や治療後では、死滅したがん細胞や正常細胞によって死細胞や老廃物が蓄積します。また、抗がん剤が完全に代謝されて排泄されるまでは抗がん剤の毒作用がしばらく残ります。このような体内に増えた毒性物質や老廃物の分解と排泄を促進し、血液をきれいな状態にするために、「血液浄化(cleansing)」や「解毒(detoxification)」を促進する薬草治療の有用性が検討されています。
抗がん剤治療中および治療後の血液浄化と解毒作用に関して、ミルクシスル(milk thistle)というハーブの有効性が報告されています。毒物を解毒し血液を浄化する主な臓器は肝臓と腎臓ですが、ミルクシスルは肝臓の解毒機能を高めることが知られています。
ミルクシスルはヨーロッパでは古くから肝臓の治療薬として用いられ、抗がん剤治療によって受けたダメージの回復や血液浄化にも有効であることが多くの臨床試験によって確認されています。抗がん剤による肝臓のダメージを軽減し、傷害を受けた肝細胞の再生を促進する作用も確かめられており、西洋医学でも血液浄化と解毒を促進するハーブとして利用されています。
【ミルクシスルによる抗がん剤治療中の肝臓傷害の予防効果】
アルコールや医薬品、トルエンやキシレンなどの化学薬品、毒キノコなど、多くの肝臓毒性物質による肝臓傷害に対して、ミルクシスルが肝臓保護作用を示すことは、動物実験のみならずヒトでの臨床試験でも確認されています。
例えば、死亡率30%に上る毒キノコであるタマゴテングタケ(Amanita phalloides)を摂取する前にミルクシスルの活性成分であるシリマリンを服用すると、100%の確率で中毒を防ぐことができ、毒キノコ服用後24時間後でも死亡を防ぐ効果があることが報告されています。
また、有毒なトルエンやキシレン蒸気に5~20年間曝露された労働者の肝障害に対して、シリマリン投与によって有意な改善がみられることが報告されています。アルコール性肝障害に対しても、ミルクシスルおよびその活性成分のシリマリンは非常に高い改善効果が認められています。
動物実験では、四塩化炭素、ガラクトサミン、エタノールなど様々な有害な化学薬品による実験的肝障害の全てに対して、ミルクシスルは肝臓保護作用を示すことが確かめられています。
抗がん剤の多くは肝臓で代謝され、肝臓にダメージを与えます。このような抗がん剤治療による肝臓障害に対しても、ミルクシスルの有効性が報告されています。
肝障害を起こす抗がん剤としてdactinomycin, daunorubicin, docetaxel, gemcitabine, imatinib, 6-mercaptopurine, methotrexate, oaliplatinなどがあります。欧米では、これらの抗がん剤治療を受けている患者さんが、自分の判断あるいは医師の処方としてミルクシスルのサプリメントを摂取しています。欧米では、ミルクシスルの肝臓保護作用が良く知られており、サプリメントとして多くの商品が販売されています。肝障害を予防できると、抗がん剤治療を予定通り行うことができます。
肝機能障害を発症した急性リンパ性白血病の50人の子供を対象に、ミルクシスルのサプリメントの治療効果がランダム化二重盲検試験で検討されています。その試験結果によると、ミルクシスルの投与によって、肝機能が著明に改善することが明らかになっています。
ミルクシスルは肝臓保護作用の他にも、抗がん剤による腎臓や心臓のダメージを軽減する効果も報告されています。
【ミルクシスルの腎臓保護作用】
抗がん剤治療による腎臓毒性に対するミルクシスルの効果に関する臨床試験はまだ実施されていませんが、動物実験では、シスプラチン(cisplatin)やイフォスファマイド(ifosfamide)のような抗がん剤で引き起こされる腎臓障害に対してミルクシスルの成分が保護作用を示すことが報告されています。
放射線による腎臓のダメージにもミルクシスルは保護作用を示します。
【ミルクシスルは抗がん剤や放射線治療の効き目を高める】
ラットを使った実験ではγ線照射の1時間前にシリマリンを投与すると脾臓や肝臓や骨髄のダメージが緩和することが報告されています。
脳転移の患者に放射線治療を行うときにω3不飽和脂肪酸とシリマリンを服用すると、副作用が軽減し生存期間が延びることが臨床試験で示されています。
培養細胞や動物実験では、ミルクシスルは抗がん剤の効き目を高める可能性も示唆されてます。
【直接的な抗腫瘍活性】
様々な動物発がん実験において、シリマリンががん予防効果を発揮することが報告されています。
切除不能の進行した肝臓がんが、1日450mgのシリマリンを服用してがんが自然退縮したという症例の報告があります。
(Am J Gastroenterol. 90:1500-1503, 1995)
手術と放射線治療を行った前立腺がん患者において、シリマリン、大豆、リコピン、抗酸化剤の入ったサプリメントを服用することによって再発が有意に抑えられることが報告されています。
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